会長ご挨拶
日進月歩でAI技術の進展が著しい。ChatGPTやGeminiなど生成AIが一般市民の生活に凄まじい勢いで浸透し始めている。これを背景に、政府も国策としてAI関連の技術開発に巨額の予算を投じ始めた。AI支援によるデータ解析や、機器の自動化/遠隔化などはすでに部分的に実施されているところであるが、これを最適化して機能強化に効果的に展開しようという話である。
AI-for-Scienceの先にある未来は何か? 一言でAIといっても、その科学技術範囲は多岐にわたる。その最終形態として、まんがやアニメなどで日本社会には馴染み深い人型ロボットがイメージできる。あるいは「スタートレック」や「2001年宇宙の旅」などで登場する巨大システム、はたまた「マトリックス」の仮想現実だろうか。個人的には2年前までは、私はどれも夢物語だと思っていた。ドラえもんの誕生は2112年。確かにそれくらいだろうなという感覚であったが、日々進化するAI技術を鑑みるに楽観視する自分がいる。そう遠くないのでは? と。
そのために必要なScience-for-AIの視点には、多くの課題が残されている。例えば、より広範/大規模なシステムを繋ぐための機械学習環境、匠の知見や研究者の知能の言語化、脳機能のメカニズム解明を意図した生命科学研究、それを模倣する材料開発研究などなど、まさに異分野融合なくしては克服できない課題が山積している。
一方で、日々の営みにおける情報の希少価値性が高まっている。私ごとだが、久しぶりにドイツ時代の旧知のラボを訪ねた。コロナ禍で情報共有をサボっていたが、ドイツらしい着実な踏み固めとブレークスルーがあり、サイエンスの進展ぶりに驚嘆した。こうした知的財産は研究者の頭の中に蓄えられており、論文公表される前にその恩恵を得ることは、コミュニティの外からは難しい。
視点を変えると、こうした本質的な壁を根拠として、上述の近未来ロボット技術に懐疑的な声が一定数ある。実際に開発側も、いつAGI(汎用人工知能)、その先のASI(人工超知能)に達するか、あるいは恣意的に止めるべきか、止められるのかについて、活発に議論されている。研究者が日常的に生成AIを高い言語レベルで使うようになれば、その思考はAIに学習され、いずれ彼らのベース回路となること、あるいは国家間の開発競争状況を考えると、国際レベルの倫理観の合意形成は困難で、未来動向は読めない。
さて、AI社会に発起して徒然と記したが、本レターは光科学である。光を通じて異なる分野を横串し、新たな学際領域が開拓されてきた。最近の計測技術の進展は著しい。その一端を本レターにて共有したい。
インターネットの食わず嫌い、スマホの食わず嫌いは、いずれの時代もあった。AIに関しては次元の違うスピード変化になると感じる。複雑系/不均一系の非平衡現象を光で可視化するニーズがあり、この状況で光科学がどれだけ貢献できるか、みなさんの挑戦に期待したい。



