会長あいさつ
東北大学 国際放射光イノベーション・スマート研究センター、
多元物質科学研究所
虻川 匡司
早いもので会長としての2期目も終わりに近づいてまいりました。会長として大したことはできませんでしたが、振り返ってみますと、この期間に待望の軟X線領域の高輝度光源であるNanoTerasuの建設・整備が着々と進められ、本懇談会においては激動の数年間であったと感じております。本会の活動の場でありました、SPring-8の東京大学放射光アウトステーション物質科学ビームラインBL07LSUは、ほとんどのエンドステーションがNanoTerasuに運び込まれ、ビームラインへの設置作業が進められています。既にNanoTerasuのBL07Uでは設置された共鳴非弾性X線散乱HORNETステーション、BL08Uでは設置された雰囲気光電子分光エンドステーションの頼もしい勇姿を見ることができます。施設としても12月7日にファーストビームが滞りなく観測され、今後はいよいよビームラインに光を通す作業がはじまります。予定通り2024年の4月にはユーザー利用が開始できそうです。建設に従事している皆様の献身的なご努力に心から感謝申し上げます。
既に何度も申し上げておりますように、東京大学放射光アウトステーションのエンドステーションは、コアリションビームラインに設置されており、2024年の運用開始から2年間は、出資した企業や研究機関(コアリションメンバー)が優先的に利用可能とされるビームタイムからスタートします。運用開始3年目以降、共用ビームタイムの配分についても検討されることと思います。移設作業のために一時的にストップしております共同利用に関しましては、今後再開し継続していくために方策を探っているとのお話しが1月の総会で軌道放射物性研究施設の原田施設長よりありました。今後NanoTerasuの利用方法が整備されるにしたがって、具体的な事が決まっていくものと思いますので、今しばらくお待ちいただければと思います。
また、これも1月の総会でお知らせしたように、今回の移設を機会に本会の活動の場を特定の施設やビームラインに限らずに、国内のVUV・SX領域の光を使ったサイエンス全体を対象にすることを目指して、本会の将来のありかたをワーキンググループにて検討いただいております。全国には、VUV・SX光源で優れた成果をあげている放射光施設、ビームラインが数多くあります。また、高次高調波レーザー光源は、物性研究に重要なVUV・SX光源となりつつあります。今後、総会や研究会などを通して、本会の新しい形を皆様と議論し作り上げていくことになると思います。そして国内のVUV・SXサイエンスを牽引していく利用者集団となることが本懇談会の役割と考えています。今後とも皆様の活躍とVUV・SXサイエンスへのご貢献を期待しております。
2023年12月6日
虻川匡司